BPOの効果的な活用で実現する企業の競争力強化

市場の成熟化や製品・サービスのコモディティ化、そして少子高齢化による人材不足など、企業を取り巻く環境は決して順風満帆とはいえず、業績拡大を目指してコア業務の強化、新事業への進出など何かしらの施策が必須です。人手不足のなかで成長を実現し、政府が推進する働き方改革を実現していくためには、業務を効率化しつつ生産性も高めていかなければなりません。今回は、人材不足に悩む企業が効率化を実現し、生産性を高める手段として効果的なBPOについて、概要や導入のポイントをお伝えします。
業務効率化、生産性向上には業務プロセスの可視化やアウトソースが必要?
少子高齢化による生産年齢人口の減少は、多くの職種で人材不足を慢性化させています。帝国データバンクが2021年2月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2021年1月)」。この結果を見ると、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の影響もあり、全体的には人手不足を感じる企業の割合は減少しています。
ただ、生産年齢人口の減少が収まるわけではないため、新型コロナウイルスの感染が収束に向かえば、また多くの企業で人手不足が増加していくと予測できます。
人手不足のなかで業務効率化・生産性向上を実現するには?
人手不足を前提として、そのなかで成長を持続させ競合との競争力を強化するためには、業務効率化・生産性向上が欠かせません。そこで重要となるのが、「業務プロセスの可視化」です。
- 現状の業務プロセスを洗い出す
まず、業務プロセスの可視化を行います。そのために現状の業務プロセスをすべて書き出す必要があります。部署ごとの業務プロセスだけではなく、部署をまたぐ業務プロセスに関してもすべて書き出しましょう。
- 業務プロセスのなかで効率化を妨げている業務を把握する
すべての業務プロセスを可視化させたら、次に行うのはボトルネックとなっている業務の明確化です。これにより効率化を妨げる業務を把握します。
- 効率化のボトルネックとなっている業務プロセスの改善
効率化を妨げる業務を把握したら、いかにその業務プロセスを改善し、効率化・生産性向上につなげるかの検討を行います。主な対策として考えられるのは、「内製で業務プロセスの見直しを行う」「ツールを活用する」「外部に委託する」の3点です。
業務プロセス改善の対策、それぞれの特徴と選択のポイント
業務プロセス改善の対策として考えられる3点、それぞれの特徴と選択のポイントは次の通りです。
- 内製で業務プロセスの見直しを行う
内製で業務プロセスの改善を行うケースとしては、「人の判断が必要な業務」「販売や取引先との折衝など直接、利益につながる業務」などが挙げられます。ただ、これまでも内製で行ってきた結果、ボトルネックが生まれているため、改善には業務プロセスを根底から見直す必要があるでしょう。
- ツールを活用する
ツールを活用するケースとしては、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やMA(マーケティングオートメーション)ツール、営業・顧客・経理管理ツールなどが挙げられます。基本的には一定の手順で進められるルーティンワークに適した対策です。ポイントは、「導入コストに見合った活用が可能か」「ツールを扱える人材の確保ができるか」でしょう。
- 外部に委託する
外部に委託する場合、「アウトソーシング」もしくは「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」が考えられます。どういった業務を委託するかにもよりますが、基本的には人の判断が必要な業務でもルーティンワークでも対応可能です。ポイントはツール活用と同じように内製で行うのに比べ費用対効果が高いかどうかでしょう。
業務効率化を実現するBPOとは?
前項で、「外部に委託する」方法として、アウトソーシングとBPOを挙げました。現在、外部委託方法として注目を集め始めているBPOですが、アウトソーシングとの違いについて理解されていない方も多いのではないでしょうか。そこで、ここではBPOとはどういったものなのか、アウトソーシングとは何が違うのかについて説明します。
従来のアウトソーシングは人手不足の解消として主に単純な作業を外部委託していたのに対し、BPOは、自社の業務を業務プロセスごとに外部の専門企業に委託するという意味です。委託する業務内容は基本的にどちらも自社のコア業務以外の業務です。主にルーティンワークほどではないものの独自性があまり求められない総務、人事、経理、物流、コールセンターといった業務で利用されるケースが多く見られます。
これだけを見ると、アウトソーシングもBPOもどちらもそれほど大きくは変わらないと思われるかもしれません。しかし、最近になって変わってきたのはBPOを活用する企業の考え方です。従来、BPOは経理や総務、コールセンターといった業務を外部委託し、コスト削減を狙う守りの使い方がほとんどでした。
しかし最近では、「BPOの活用で業務プロセスを最適化する」「自社社員がコア業務に集中しやすくなる」「人材資源の最適配置で付加価値を創造する」など、企業として競合に対して攻めの効果を求めた利用が増えています。この点においてBPOは従来のアウトソーシングとは異なります。単純に人手不足の解消対策ではなく、貴重な社内人材をコア業務に専念させることで競争力の強化を図る狙いもあると考えられます。
大企業よりも中堅大手企業に向いているBPO
人手不足解消のための業務効率化、生産性向上だけではなく、コア業務の強化も可能にするとして注目を集めているBPO。特に向いているのは社員数が1,000~5,000人未満の中堅大手企業です。
BPOは業務プロセス単位で委託するため、予算もかかり、従業員の多い大企業に向いていると思われがちです。しかし、実際には組織の規模が大きいと雇用の維持を目的とした社内の反発も予想され、BPOの活用に二の足を踏んでしまうケースも少なくありません。また、ブランドネームのある大企業はそれほど人手不足に陥っていないということも考えられます。
中堅大手企業が積極的にBPOを利用すべき理由
中堅大手企業が積極的にBPOを利用すべき理由としては、業務効率化を求めてツールを導入したものの効果的に活用できず、BPOと併用する企業が多いケースも考えられます。
2020年12月から2021年1月にかけてMM総研が行った「RPA国内利用動向調査2021」。このなかで企業規模別の導入率を見ると、年商50億円以上の企業が37%で、2022年度には50%に達すると予測しています。このように多くの企業でRPAの活用が進んではいるものの、RPAは基本的に一定の手順を踏んで行うルーティンワークに向いているため、BPOのような攻めの利用は困難です。
そこで、RPAだけでは実現が難しい競合に対する競争力強化策として、BPOを利用するケースが増えています。また、業務のデジタル化を進めていくうえで、専門家不足に対応するためにBPOを活用するケースも少なくありません。そうした理由から、BPOを利用する予算がある中堅大手企業での利用が増えているのではと推測できます。
BPOの活用は自社の将来像を見据え、中長期的な視点を忘れずに
BPOを活用すれば業務効率化が進み、生産性向上からのコア業務への人材の集中、新たな付加価値の創造などの実現にも大きく貢献するでしょう。ただし、BPOはあくまでも外部委託であるため、導入の際には必ず費用対効果を加味することを忘れないようにする必要があります。
BPOを活用する際は、今後の事業展開やデジタル化への対応を踏まえ、中長期的な視点で検討することが求められます。また、自社の将来像を明確にし、求める姿に到達するためにはどういった人材確保が必要かの確認が欠かせません。そうした意味で、短期間での成果を求めず、どの部分でBPOを活用するかの選択が競争力を高め、継続的に成長していくためのポイントになるでしょう。
参照サイト: