BCP対策は、今すべきデジタル業務改革との同時進行が一番

世界各地で起きる大規模な地震、大型台風といった自然災害、思いもよらぬ大事故や大火災の発生、そして新型コロナウイルスのような感染症への対応など、BCP(事業継続計画)の重要性を再認識させられる出来事が増えています。非常時のデータバックアップや回線の維持、テレワーク可能な業務体制の構築などは、どれもBCPの重要な対策事項です。しかし、BCP対策はしたものの長年見直しをしていなかったり、あるいは導入を検討したまま棚上げになっていたりという企業も多いのではないでしょうか? なぜBCPへの対応が遅れ気味になるのかというと、売上に直接結びつかないことや、喫緊の課題でないことなどがその原因のひとつです。そこで、売上や利益にもつながるようなBCPを目指して、今話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)とBCP対策を同時に進めてみてはいかがでしょうか。
データ保護などソフト面でのBCP対策
まずはBCPについて再認識し、自社の現状と照らし合わせてみることをおすすめします。オフィスの立地や建物の構造について、災害時のダメージを想定して主要拠点を分散したり建物を補強したりといったハード面での対応もBCPのひとつですが、ここでは、企業がもつ顧客情報や業務データの保護といったソフト面でのBCP対策について考えてみます。
企業のもつ情報の重要性を認識する
資金的な問題を除けば、オフィスの建物や使用する什器などは、災害などで被害を受けても修理や借り換え、買い換えでなんとか再調達することができます。しかし、情報についてはどうでしょう。取引先との契約書、過去の事業情報などの紙文書は、震災や水害はもちろん、その会社や同じビルの他社のオフィス火災でも消失や毀損してしまうことは避けられません。それらの再調達はかなり難しいことは容易に想像できると思います。
また、重要な情報をデジタル技術でデータ化さえしておけば安心というわけでもありません。オリジナルのデータが一か所に一つだけしかない場合や、バックアップ用の複製データが複数あっても、保存しているエリアが重複している場合、大規模災害が起きた際に双方を失う可能性も否定できません。これは災害に限らず、システムダウンのようなコンピュータ上のトラブルでも同様です。
データのBCP対策のチェックポイント
BCP対策として社内情報のデータ化は大前提ですが、その安全性をより高める観点で注意点を挙げると、以下の通りです。
- 重要文書に関しては、紙でしか存在していない情報をデータ化して保管・管理しているか。
- 複数の拠点やサーバー、クラウド上にデータを分散化し、正副を常に利用可能な状態で保管・管理しているか。
- システムのダウンタイムを最小にできるような、可用性を確保したITシステムにしているか。
データとしてコンピュータ上で作られたり集められたりした情報だけではなく、取引先などと交わした書類も必要に応じてデータ化し、BCPに適した方法で保管・管理するべきです。
BCP対策にもなるDX
最近、何かとその話題を耳にすることが多いDXという概念があります。広義ではデータとデジタル技術を使ってビジネスを変革していくという意味ですが、実はBCPとも密接な関わりがあることはご存じでしょうか。DXの基本および基盤は、さまざまな文書や情報を電子化し、場所や距離に関わりなくいつでもビジネスの重要な情報に接したり、新しく得た情報をアップデートしたりできる環境にあります。これは、データ面でのBCP対策にも活用できます。
DXとは
そもそも、DXとはなんでしょうか。経済産業省によると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。(経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンスから「DX 推進指標」における「DX」の定義より)
ここからも、既存の古いITシステムを新しく構築しなおすというレベルではないことを、ご理解いただけると思います。DXの目的はビジネスモデルを変革することであり、競争上の優位性を確立するための手法のひとつです。
DXは、今後のビジネスに不可欠な考え方だという印象をお持ちかもしれません。しかし、ここで単なる印象で終わらせずにより具体的に正しくDXを理解することで、その価値や目的が見えて導入機運を高めることができます。
今DXが求められる理由
消費者はもちろん企業間取引でさえも、実店舗や対面の営業による購買から、インターネット上での発注や決済対応が求められるようになっています。さらに、同業他社間だけでの競争にとどまらず、既存のビジネスモデルを覆すような商品・サービスが業界外から現れるケースもあります。ビジネスを取り巻く環境は以下のように変化しているといえます。
- 消費者の変化(モノ消費からコト消費へ、ネット購入の広がり)
- 新興企業や新技術の活用による既存のビジネスモデルへの脅威
こうした変化のほか、日本では少子高齢化の進展による労働人口減で、リソースの効率的利用が求められているという問題もあります。「人海戦術」で競争に打ち勝てる時代ではなくなり、むしろ労働人口の減少に合わせ、デジタルを活用した効率的なビジネススタイルに変革し、営業やサービスの可能性を拡大することがBCPとしても得策といえます。
業務分析からはじめるDX
DXもBCPも情報のデジタル化から次のステップが見えてきます。まずは現状の業務を分析することがデジタル化の第一歩です。
ただし、専門のスタッフが社内にいないと、この業務分析はかなりの負担です。しかし、コンサルティング会社へすべて業務委託するとコストがかかります。一方、DX的な発想で業務分析そのものを省力化、短期化、データ化して可視化し、数値をベースにした診断を可能にする方法もあります。それがNTT印刷の「まるごと電子化(AI業務分析)」です。従業員が使うパソコンなどの履歴をデータとして収集・解析することで、部門や部署、課別の業務内容や頻度を数値化して業務分析することができます。
AI-OCRを活用した紙書類の電子化
もうひとつ、DXを妨げる要因は、紙書類の電子化です。コンピュータで作成・保存されている文書はデータでの運用・管理ができますが、取引先から受け取った紙の伝票などは、取引先の社名と日付、金額や支払い条件などをデータ入力して保存するのも手間がかかります。
こういった紙で運用・保管されている書類については、AIを搭載したOCR(AI-OCR)ですべて電子化してしまう方法があります。AIを活用することでこれまでのOCRでは認識しづらかった癖のある手書き文字なども、読み取り可能になりました。人が手作業で伝票からコンピュータに打ち込むスピードに比べれば、格段に時間の短縮が図れます。紙文書の電子化のスピードも速まるでしょう。
(「AI業務分析」と「AI-OCR」については、こちらをご覧ください)
コミュニケーションツールも活用
業務情報のデジタル化推進で、テレワークのような従来とは異なるワークスタイルと、それに伴うコミュニケーションも容易になります。そして、こうした業務環境の構築は、災害など非常時の柔軟な対策にも大いに役立ちます。
例えば、チャットツールでの情報共有や、Web会議システムを使ったオンラインミーティングなども、立派なBCP対策のツールになります。
DXで業務改革とBCPを同時進行で実現
新型コロナウイルス感染症発生時、感染リスクの削減と、ビジネス機会の減少を極力抑える対策としてテレワークやWeb会議をスムーズに導入できた企業と、そうでない企業に分かれました。文書や情報のデータ化およびDXへの基本的な対応をしていれば、無理なくテレワークに移行できたでしょう。突発的な危機に対応するためのBCP対策は、日頃から地道な準備が求められます。
DXもBCPも基本はできるだけ情報をデータで管理することです。そこで書類の電子化など、業務のデジタル化から考えてみることが、BCPへの対応の第一歩であり、DXへの布石ともなります。BCP対策を進めることで、デジタル時代に必要な業務改革も同時に進められ、最終的には業務効率化によるコスト減や売上機会の拡大にもつながります。
参考:
- AI-OCR|サービス詳細|まるごと電子化
- まるごと電子化(プリドキュ)サービス総合案内|お役立ち資料|まるごと電子化
- デジタルトランスフォーメーション時代のBCPはどう導入すればいいか|DAiKO + PLUS
- 事業継続ガイドライン|内閣府