ブログ

厳しいビジネス環境だからこそ、あらためてBPOのメリットとデメリットを考える

厳しいビジネス環境だからこそ、あらためてBPOのメリットとデメリットを考える

労働人口の減少に伴い、あらゆる業界・業種において業務効率化が必要に迫られています。さらに、今回の新型コロナウイルス流行で必要性が顕在化したリモートワークや、今後30年以内に70%の確率で起きると予測されている首都圏直下型地震などの災害に備えるためのBCP(事業継続計画)としても、業務の一極集中を防ぎ、効率化しておく必要があります。業務効率化の手段のひとつとして、アウトソーシングやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)があります。

混同されやすいアウトソーシングとBPOですが、その実態は似て非なるものです。この違いについて、明確に意識して使い分けている人は少ないかもしれません。あらためて双方の意義の違いやBPOのメリット・デメリットについて解説します。

アウトソーシングとBPOの違い

それではまず、それぞれの定義の違いについて見ていきます。

アウトソーシングとは?

アウトソーシングとは、「業務に必要なリソースを外部から調達したり、業務そのものを委託する手法」のことです。

自社内だけでは「時間が足りない」「人手が足りない」といった状況の際に、外部の企業や個人に業務を切り出して委託することといえます。

例えば、年間を通して繁閑が大きい業務や新たに立ち上げた事業で初期に人員不足が生じている場合など、時期を限定して短期的に外部リソースを活用し、ビジネス上の非コア業務で発生する業務を外部委託する場合がアウトソーシングに該当します。

BPOとは?

一方、BPOはどうでしょう? BPOは、不足した労力を補うような対症療法的なものではなく、業務改善、業務の可視化、時には人材育成などといった「ビジネスプロセス」の一部を外部に委託することで、企業がコア業務にリソースを集中できるようにするための手法のことを指します。

例えば、コールセンターの場合、電話対応やメールの受付といった業務そのものを外部企業に委託する場合はアウトソーシングですが、業務課題である問い合わせへの回答時間の短縮や問い合わせデータの分析から業務改善につなげるといった、業務プロセスの改革・構築までを請け負うのがBPOにあたります。
契約上はアウトソーシングと同じ業務委託ですが、目的や委託する効果について何を求めるかがアウトソーシングとは異なります。

BPOのメリットとデメリット

続いて、BPOを実施するうえでのメリット、そして実施にあたってのデメリットについて考えてみましょう。

BPOのメリット

・専門サービス企業の手法やツールの活用

BPOにおけるアウトソーシング先は、単に人手があればよいというものではありません。ビジネスにおける特定の課題解決において、専門的なノウハウやツールを持っている必要があります。依頼主である企業は、自社のリソースを割かずにこれらをビジネスに取り入れることで、業務の効率化につながるだけではなく、自社リソースをコア業務に集中させることができるため、自社サービスの提供価値・品質向上につながります。

・自社にノウハウがない新しい事業やサービスを展開する際の対応力強化

ビジネスを取り巻く外部環境の変化に伴い、新たなサービスの開発や販路の開拓などに取り組まざるを得ない状況になるケースもあることでしょう。自社内だけではノウハウやリソースが不足している場合もBPOが活用できます。専門知識や実績がある外部企業に相談・委託することで、課題の抽出、他社動向の把握、業務フローの整備など、さまざまなノウハウを提供してもらうことができるでしょう。

BPOのデメリット

・社内処理より情報漏えいリスクが高くなる懸念

BPOを推進していくためには、業務プロセスのアウトソーシングという性質上、委託先の企業に対して、社内の機密情報や個人情報など必要最低限の情報を開示しながら進める必要があります。当然、自社内で業務を行うよりは情報漏えいに関するリスクは高まります。

・委託先企業の倒産や撤退によるリスク

自社の業務内容の一部を外部委託するということは、委託先企業への依存を高めることにもつながります。仮に、委託先企業の業務に不正が発覚したり、倒産や撤退により業務継続が困難になった場合は、急いで自社内に業務を戻したり、他の委託先を再選定するといった不測の追加業務が発生します。

・ノウハウの蓄積に時間がかかる

BPOは業務プロセスの改革と再構築、その後の運営も含めて委託されることに加え、自社のリソースをコア業務に集中させるという性質上、委託業務の具体的なプロセスやオペレーションに関しては自社内にノウハウが蓄積されにくいというデメリットがあります。そのため、一度BPO化してしまうと、内製に戻すことが難しくなるという側面もあります。

・委託内容によっては多額のコストがかかる

アウトソーシングのような短期単発の外部委託とは異なり、BPOは比較的中長期にわたる委託契約になることがあります。委託内容によっては、人件費のほかに、システム費用、倉庫利用料、保管費用といった内製の場合には発生しない費目のコストが発生することも考えられます。

あらためてBPOについて再認識するべき理由と導入時の注意点

メリットとデメリットを理解したうえで、あらためてBPOの必要性や価値について考えてみましょう。

変化の激しい時代、BPOはデメリットを上回るメリットがある

BPOのデメリットは、適切に解消することでメリットに結びつけることができます。

  • 情報漏えいリスクへの対処

信頼ができるBPO事業者への委託が基本です。自社と委託先の双方が協力のもと、セキュリティ環境を精査・強化します。守秘義務契約の締結はもちろん、委託先からさらに第三者委託するケースでもその環境の精査や定期的な監査を実施します。
堅固なセキュリティ体制をもち、信頼して情報を受け渡すことができる委託先が見つかれば、自社内では情報管理や保守に費やしていたリソースを他のコア業務に振り替えることも可能となるでしょう。

  • 委託リスクへの対処

不正や倒産、撤退といった事態による委託先の業務不履行は予測して回避することは困難ですが、委託先選定時のリスクヘッジとして、細分化した業務プロセスを複数の企業に分散委託しておくという方法が考えられます。仮に委託先の1社が撤退してしまったとしても、自社の被害を最小限に抑えることができます。また、それだけではなく、大型台風や地震といった局地的な災害に見舞われた際も委託先企業が全国に分散されていることで、ビジネスを止めずに事業継続できる可能性が高まるというメリットがあります。

  • ノウハウの蓄積

委託先企業は単に「外注先」ではなく「パートナー」という位置づけであることを認識し、定期的な進捗報告、情報共有の徹底、ワークフローのドキュメント化、運用作業のマニュアル化などを通じて積極的に自社内にもノウハウが残る仕組みづくりをすることが肝要です。

  • コストの増加

内製でかかっていたコストの多くは人件費であるため、その詳細は見えづらいものです。一方で、外部委託による外注費であれば、見積書に記載された費目としてコスト詳細が可視化されるため、コストコントロールがしやすくなります。定期的に委託内容や役割分担を見直すことで、自社、委託先双方にメリットのある体制を継続的に構築することができます。

BPOの肝は、限られた社内リソースをいかにコア業務に集中させ、生産性を向上させられるかにかかっています。コア業務への比重を拡大するためには、非コア業務の業務改革や再構築を含めてビジネスのプロセスを改善していくBPOを、積極的に導入することが得策といえるでしょう。

導入時には経営戦略に基づいた業務の改善や改革とともに

BPOの活用では、アウトソーシング以上にビジネス全体のなかで自社にとって委託先をどう効果的に生かすか、機能や効果の最大化を念頭におくことが大切です。そのためには、自社の業務についても俯瞰(ふかん)的・客観的な視点で見直しながら、導入効果が期待できる業務を洗い出して分析することが重要です。

日本企業の長年の課題となっている長時間労働の削減をはじめ、働き方改革に向けてデスクワークの効率化などの取り組みが各社で進められています。社内努力だけではなく、BPOの活用でこれを実現する方法もあります。例えば、日常運用している社内書類を電子化しペーパーレス環境を構築する場合は、専門のサービス事業者によるノウハウやツール、紙書類を分類・保管するインフラなどを利用するのが早道です。

NTT印刷ではオフィスの業務改革に向けての書類の電子化や、ペーパーレス化によるコスト削減、それらの結果としての働き方改革のお手伝いをしています。

自社の業務分析・改善を経て、あらためてBPOのメリットを見いだすことが重要

BPOの導入では、忙しい、人手が足りないからアウトソーシングを選択するという対症療法ではなく、自社のリソースをコア業務に集中させ、ビジネスの価値を最大化する視点が重要です。その結果、自社ビジネスにとって収益性が高く、提供価値が大きい業務に絞って効率的に生産性を向上させることが可能です。

そしてもうひとつ、増える傾向にある大型台風の到来、予想もしていなかった局地的な震災、そして新型コロナウイルスのような感染症発生で経済活動の制約を受けた場合など、緊急時にBCP(事業継続計画)のひとつとして会社の事業所以外の地域にビジネスの一部を置いたり、外部のスタッフと作業を分散したりすることは、BPO活用のメリットにもなります。

人手不足への対処やコストの安さだけで委託してきた従来のアウトソーシングの考え方を拡張し、改めて自社が注力すべき業務の見直しとBPOで得られる効果を考えてみることをお勧めします。

参考:

業務効率化・働き方改革のお役立ち資料

関連記事