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オフィス経費削減の決め手となるか!? 書類電子化の効果はどのくらい?

オフィス経費削減の決め手となるか!? 書類電子化の効果はどのくらい?

売上拡大を目指すためには、新たな設備や新商品開発といった投資も必要です。

そのための原資をねん出するには、安定的な利益構造の構築は欠かせません。また、日本経済が成熟化する今日では、急激な売上拡大は容易ではなく、既存の利益構造の最大化に焦点が当たる場合も少なくありません。そうした経営努力の中では、既存業務のコスト削減から検討を始める企業も少なくないでしょう。

では、コスト削減を始めるとき、何から着手すべきでしょうか。まずは、オフィスなどの固定費に注目してみてはいかがでしょうか。オフィスの固定費削減を図る方法の一つとして、日常的に作成・管理している紙の書類を電子化するペーパーレス化があります。

今回は、ペーパーレス化によるオフィス経費の削減効果と事例をご紹介します。

書類の電子化によるペーパーレス化を進めるべき理由

ITの浸透により企業のペーパーレス化が進み、紙を使う頻度は減ってきていますが、やはり目で見て触れるという安心感からか、本当の意味でペーパーレス化が進んでいるオフィスはまだまだ多くありません。

紙書類がコストを高める理由を確認し、ペーパーレス化が進んでいない理由についても改めて考えてみます。

紙が増えればコストも上がる

紙の存在がどういったコストを圧迫しているか、改めて見てみます。

まずは、コピー機・複合機による費用が挙げられます。出力時のトナーやインクなどの消耗品に加え、コピー機・複合機本体のリース代や購入費、また保守費や電気代なども発生します。出力した書類が不要となり、書類廃棄をする際にはシュレッダーや、より厳格な機密書類の廃棄処理には溶解処理などの費用も必要になります。その他には、紙書類を保管する書棚やそれらの機器やオフィス家具を置くための面積、つまりオフィス賃貸料など、地味ではありますが、幅広くさまざまなコストがかかっています。

これらの費用は数値の計上で確認することができますが、他にも数値で確認することが難しい影響があります。例えば、目的の書類を探し出す労力と時間は人件費につながります。すぐに探し出すことができれば大きな負担にはなりませんが、書類の整理が不十分なために時間がかかるといったケースも珍しくはありません。書類をすぐに見つけ出すためには、普段から整理整頓をしておく必要がありますが、そうした作業にも人件費は影響してきます。

紙書類によるコストの影響はこれだけ幅広い範囲で生じています。相乗的に発生している費用が多いので、こうした対象のコスト削減を検討する場合は、紙の出力量をなるべく減らす、電気を細かく消すといった細かな削減運動を推奨する前に、根本的な改善策であるペーパーレス化を検討すべきといえるでしょう。

ペーパーレス化を阻む要因

新型コロナウイルス感染拡大以前は、日本の企業の多くでペーパーレス化は進んでいませんでした。

その理由の多くは、従来通りの紙の運用で支障なく運営ができることから、かえってペーパーレス化への運用変更に対する労力や投資が惜しまれたためです。また、次のようなことも背景として挙げられます。

  • 紙書類による申請と押印による承認ルールの堅持と紙書類での保管継続。
  • ペーパーレス化のためのICT機器やネットワークといった環境の不足。
  • セキュリティ対策がなされたICT機器(パソコンやモバイル)の社員1人当たりの普及率。 
  • 利用者のICTリテラシーの低さ。

ペーパーレス化によるコスト削減を進める場合は、今までの慣習や意識を改善することが大切です。

ペーパーレス化効果による強い組織

書類の電子化によるペーパーレス化で得られる効果は、コスト削減のみではありません。電子化により情報の伝達速度が速まり、情報共有が進むという効果も期待できる可能性があります。

次に、ペーパーレス化によるビジネス上のプラス効果についても見てみましょう。

社員の無駄な仕事を減らし、コア業務に集中

文具やオフィス家具メーカーのコクヨ株式会社の2017年調査によれば、1日のうち書類を探す時間は約20分(週5日以上書類を検索する有職者1,031名を対象)となりました。年間の勤務日数を240日とすると、約80時間/年間となる計算です。

また、書類の検索以外にも、書類の作成や編集時間、プリントアウトや運搬、配布といった付帯業務が加わり、更に多くの時間を紙書類に関連することで費やしていることが分かります。このような付帯業務をできるだけ減らし、コア業務へのリソースの集中を高めることが生産性向上に直結します。その方法の一つがペーパーレス化であり、書類に関わる業務時間を削減することでもあります。

また、大地震などの自然災害や今回の新型コロナウイルス感染拡大のような緊急事態によってオフィスに出勤できない状況は、これからも当たり前のように発生するでしょう。そうした事態に備え、書類を電子化し、データ化した書類を遠隔地からでも自在に供覧することは、緊急時の事業継続にも関わり、情報活用における利便性を高めることもできます。また、重要な会社情報を適切にバックアップしておくことは、企業の事業継続性の確保にもつながります。

1人当たり文書保存量61%削減、野村総合研究所の取り組み

それでは、ペーパーレス化についての実際の取り組み事例を見てみましょう。

総務省監修の「10のワークプレイス改革の取組」から一例を取り上げます。

「紙にとらわれない働き方」で課題解決と生産性向上を目指す

日本を代表するコンサルティングファームである野村総合研究所では、紙の資料がデスクに山積みとなり、キャビネットに書類が溢れるといった職場環境が常態化していた時期がありました。この状況を打開するため、野村総研は2005年からペーパーレス化に着手を始めました。その取り組みは、

  • 「ノンペーパー会議の実施」
  • 「共有資料の電子化と個人資料の廃棄」
  • 「1人1台のセキュリティ対策を施したノートPC」
  • 「本部にあるキャビネットの 70%削減」

という目標を掲げた社長からのメールでスタートしました。

ペーパーレス化の目標をコスト削減に執着せず、「現場による、現場のための、現場自身の取り組みである」と効率化と生産性向上を掲げ、経営層が主導して方針を打ち出し、ワークスタイル改革を視野に含めて取り組みは進められました。

1.会議の効率化

まず、会議をより効率的に行うために、紙を使用しないノンペーパー会議の実現を目指しました。

「会議4原則」の導入とともに、「必要のない会議の廃止」「目的を絞った会議時間の短縮」「開催頻度の見直し」「出席者の絞り込み」を行い、会議の効率化、紙資料の縮小を実現しました。

【会議4原則】

  • 目的の事前連絡

会議目的や議題を事前に知らせ、中身の濃い議論にする。

  • 資料の事前公開

資料の電子配布で会議中に説明する時間を縮小、議論への展開を速やかにする。

  • 議事録の即時作成

会議中に電子的に議事録を作成し、同時進行でプロジェクターに投影、終了後の共有を迅速にする。

  • 議事録・会議資料の共有

未出席者とのグループウェアによる会議資料の共有、業務への即時展開。

これらの取り組みの結果、約1年という期間で、会議の総時間を11万1,940分から6万4,795分へと大幅に短縮しました。

2.整理整頓のための「捨て捨て」活動の実施

野村総研のペーパーレス化では、「紙を使わない・残さない」という紙の消費量を削減する取り組みというよりも「紙にとらわれない働き方」として、ノンペーパーでも活動できるワークスタイルの構築を重点に業務効率化を目指したことがポイントとして挙げられます。

ワークスタイル構築のためにまず着手したのは、机上や足元、共用キャビネットなどに長年保管してきた古い書類の分類と処理です。

  • 不要なものは廃棄・焼却処分とする。
  • 参照頻度の低いものは社外倉庫の保管とする。
  • 頻繁に参照するが紙で保管する必要のないものは電子化する。

この3つの区分による整理整頓活動「捨て捨て」を1年間実施し、廃棄・焼却した書類が段ボール箱で810箱、電子化書類が195箱、外部の倉庫などへ保管したものが171箱となり、書類の保管スペースは次のように縮小することができました。

  • 共用キャビネット(6段換算):69%削減(90本⇒28本)
  • 個人サイドキャビネット:56%削減(340本⇒151本)
  • 1人当たりの文書保存量:61%削減(3.52fm/人⇒1.36fm/人)※1fm=A4判用紙の積み上げ高1m

3.オフィス環境の改革

業務自体に関係する改善策として、ノートPCを本部の社員全員に配布し、ミーティングスペースや休憩スペースなどを新たに増設し、フロアのどこでも効果的に仕事ができるようフリーアドレス制を導入しました。

この取り組みの結果、個人座席は203席から172席に削減され、その分の空いた面積はミーティングスペースを新設し、ゆとりのある空間が生まれたことで、コミュニケーションの活性化にも貢献しました。

また、プリントアウト用の複合機を社員個人のICカードとともに管理し、無駄な出力やプリントアウトの放置などを防止する仕組みも取り入れました。

4.情報共有化の推進

社長のトップダウンで実施した会議資料の電子化など上記の会議4原則に加えて、情報共有の拡大と浸透を狙い、文書管理方法を社内ネットワーク上のフォルダで資料データを管理・共有できる体制へと見直しました。

データによる共有率を高め、管理基準を明確にし、情報の散在防止を図り、各自が紙に出力して手元に保管するといった紙資源の無駄を排除する体制を構築したことで、紙が無造作に蓄積されないようなワークスタイルを作り上げることができました。

作成コストと保管コストの両方でオフィス経費の削減を

このようにペーパーレス化を達成することで、コピー機・複合機などの運用コストや保管スペースの縮小によるオフィス経費の削減だけではなく、情報の検索時間の短縮や共有の推進が期待できます。

しかし、セキュリティ対策のなされたPCの普及や文書管理システムのような専用ツールの導入、それに合わせた利用者のICTリテラシーの向上には、それなりの時間と労力が必要であることも事実です。

まずは、これまでに蓄積された紙書類の「廃棄・倉庫保管・電子化」による整理から着手することがお勧めできます。これらは明日からすぐにでも始められ、コスト削減といった分かり易い効果を目標にすることもでき、具体的な効果を検証することもできます。

その次のステップとして、日常的に作成・利用している事務書類で効率化の効果が高いものから電子化し、紙書類の蓄積を減らし、業務効率や生産性向上も視野に含めてみてはいかがでしょうか。書類の電子化の推進には事業継続性の維持など、企業の存続にとって重要なさまざまな効果が期待できます。

 

参考:

業務効率化・働き方改革のお役立ち資料

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